石を舐めてヒスイかどうか分かりますか?
海岸で見つけた小石を地元に人に見てもらうと、いきなり口の中に入れられてびっくりすることがあります。舐めることでヒスイかどうか鑑定できるのでしょうか。
実は舐めてみるというのは、古典的な鉱物鑑定の方法として有力なものの一つです。多孔質の鉱物では舌の表面に張りつくことがあります。これを吸着があるといって鑑定に役立てることができます。
舌で触ったときの歯の大きさと指で触れたときの大きさは随分違って感じますよね。それだけ舌先は鋭敏で、指では分からない表面の違いも読み取ることが出来る場合もあります。
しかし、海岸ヒスイの場合は表面が滑らかな場合がほとんどです。もちろん吸着なんかありません。
それでは舐めてヒスイを見分けようという人は、舐めることでヒスイ表面のどのような特徴を感じ取っているのでしょうか。
私も舐めてみました。海岸で見つけたヒスイは、ちょっと塩辛くて、舌にひんやりと冷たい感じがして、あとは滑らかな平面が感じられるだけでした。ヒスイ特有の味とか舌触りとかはないようです。ヒスイ表面には特徴的な微細な結晶が現れることがありますから、この結晶を舌先で感じ取れないかとも思ったのですが、私の鈍感な舌では表面の結晶まで読み取ることは出来ませんでした。むしろこの特徴のない感触がヒスイを見分けるポイントなのかも知れません。
石英などは表面が荒れ易く、舐めたときにもっとザラザラした感触がありそうです。でもそれなら見ても分かりそうなものです。ネフライトやロディン岩を舐めてみても、私にはヒスイとの違いを舐め分けることは出来ませんでした。
もしかしたらヒスイを舐め分ける鋭敏な舌を持った方もいらっしゃるのかも知れません。私の修行が足りないだけかとも思います。ただ、私には眼をつぶってもヒスイのパワーを感じ取れるという人と同レベルにしか思えません。
私としてはもっと科学的な鑑定法がいいのではないかと思います。
ヒスイを見つける(見分ける)ポイントは?
こんな なぞなぞ歌はどうでしょうか、全部が当てはまるわけではありませんが、目安にはなると思います。

波の下でも光ってて、濡れてるときは艶やかで、乾いてきても色褪せず、
拾うとずっしり重たくて、角張っていても滑らかで、光にかざすとキラキラ光る。

色はいろいろあるけれど、白、灰、緑、青、紫、
黄色や黒もたまにある。
他の石とは明らかに違う存在感。

光を通すは高級品。ナイフで刺しても傷つかず、磨くと光沢・透明感、
舐めると冷たい、拾うとうれしい。

それが、ヒ、ス、イ。

ヒスイ鑑定のレベルは?
別にヒスイ鑑定の検定試験などありませんが、自分の経験上から勝手にレベル分けしてみました。

レベル1:初心者レベル
どれがヒスイやら全く分からず、とりあえず緑色をした石を拾いまくる。
ネフライトや緑色凝灰岩などをヒスイと思って拾っていることも多い。

レベル2:初級者レベル
ヒスイらしい石が少し分かってくるが、ロディン岩とヒスイの区別がつけられない場合が多い。
自分ではいっぱしのヒスイ探しになったつもり。加工に挑戦してみたりもする。

レベル3:中級者レベル
ロディン岩とヒスイの区別がつくようになる。逆に疑心暗鬼になって、ヒスイまでロディン岩に思えたりする。自慢のヒスイをホームページなどで自慢したくなる・・・???

レベル4:上級者レベル
海のヒスイだけでなく、川のヒスイ、風化したヒスイさえも瞬時に見分けがつき、ほとんど間違えることがない。ヒスイのプロさんです。禁止区域での採取は止めてくださいね。

レベル5:達人レベル
ヒスイだけでなくあらゆる鉱物・岩石の見分けがつく。まさに鉱物博士。

え、私のレベルですか?・・・もちろん低級レベルです。勉強・勉強。

ヒスイの表面結晶の特徴は?
Part5で、ヒスイの表面に結晶が見えるという説明がありますが、ヒスイ特有の結晶とはどういうものなのでしょうか。他の鉱物の結晶とは違っているのでしょうか。

もちろん、結晶が出ているといっても、石の表面から水晶のような六角柱状の結晶がニョキニョキと顔を出している訳ではありません。正確には石の表面に結晶の断面が現れていて、その面がよく光を反射して光って見えているということでしょう。
通常ヒスイは非常に微細な繊維状の結晶がからまりあった形状を取るため、ルーペで拡大しても結晶形そのものが見えるということはまずないのです。ルーペで確認して結晶形が見えるようなら、ヒスイである可能性は相当低いと判断していいくらいです。
ヒスイの場合、表面に見えている結晶面の大きさはたいてい1mm以下です。これより大きい場合もありますが、大きい結晶面が多い場合には石英や軟玉ヒスイであることが多いようです。
(しかし、ヒスイによっては数cmに達する結晶面もあったりして、難しいものです。)
結晶断面の形状については、私は鱗片状という表現をよく使っています。つまり魚のウロコのように
薄く平面的に見え、ある程度大きさ・形状が揃っているものをいいます。
蝶の羽の粉である鱗粉と誤解されることもあるようですが、まあ大した差はないでしょう。
針状・柱状だったり、三角形や四角形などの大きな結晶断面が出ている場合にはたぶん別の鉱物でしょう。
人によっては、ヒスイの表面にうま味調味料の○○を振りかけたように結晶が見えるなどと表現することもあるようですが、私はその○○をじっくり観察したことがないので、形状が合っているかどうかは私には分かりません。この表現は結晶形状のことを言っているのでなく、単に微細な結晶状の面がキラキラと光っているということの感覚的な表現だと解釈しておいた方がいいでしょう。

略称の意味を教えてください。
このホームページや掲示板で使われている略称ですが、意味がよく分からない方もいるでしょう。
地名・人名なども以前はそのまま書いていましたが、迷惑がかかってもいけませんのでイニシャルで表現したりしています。
それなのにここで書いてしてしまったのでは伏せている意味がなくなってしまうので全部を説明することはできませんが、順不同で良く使われる略称の意味を少し書いておきましょう。FMM; 糸魚川市にある鉱物博物館のフォッサマグナミュージアム
M学芸員さん; FMMの副館長さん(ヒスイ・鉱物全般)
T学芸員さん; FMMの学芸員さん(化石)
Kドラさん; 青海町にある国道8号線沿いのドライブイン
糸魚川市にある海岸名: Y海岸(小学校の裏手)、O海岸(H海岸ともいう。)
青海町にある海岸名: S沢、LB(RBと書く人もいる)、ドラ下(Kドラさん下のこと)、OPP(親不知ピアパーク、OBPと書く人もいる)、T海岸、I海岸 など
朝日町にある海岸名: EM海岸、MS海岸、ホテルT裏、オートキャンプ場裏 など
マイ棒:ヒスイを採取するための自家製の棒状の道具
ヒスイにはなぜヒビがあるのですか?
水晶などの綺麗な結晶にはあまりヒビなど入っていないようなのに、なぜか良質ヒスイほど内部まで深くひび割れが入っていたりすることが多いようです。
なぜでしょうか。
それはヒスイの成因に理由がありそうです。
ヒスイの結晶は空隙部分で成長するのではなく、別の岩石が地底の熱と圧力による変成作用を受けてヒスイ輝石という鉱物になったと考えられています。
ですから、ヒスイが出来た時にはもっと高温の状態だったのでしょう。
それが冷えて地上に出てくるころには体積が縮むことになります。
おそらくその時に内部にヒビが入るのではないでしょうか。
たぶんそれで、ヒスイ純度の高い良質のヒスイほどはっきりとヒビが入り易いのでしょう。
そして大きなヒスイ原石は川や海岸を転がり、他の岩石とぶつかるうちに、ヒビのところから割れていくのだと思います。
海岸で見つかる小さなヒスイでもあまり丸くならずに角ばっていたり、平面的だったりするのは、
ヒスイが硬いこともありますが、ヒビがあって、ヒビのところから割れ易いことも理由の一つと考えられます。
ヒビのところで全て割れてしまった小さなヒスイならヒビは無くなっているものもあります。
大きいヒスイを見つけたいのですが。
小さいヒスイを見つけるのもそう簡単ではないのですから、大きいヒスイを見つけるとなるとかなり大変です。
それでも、大きいヒスイを見つけている人もいらっしゃいますから、見つけられないことはないはずですね。
まず、どのくらいの大きさをもって大きいヒスイというかは人それぞれだと思います。
普通に海岸で見つけることのできるヒスイは100g以下の場合が多いようです。
100g以上のヒスイもないことはないのですが、見つかる率はかなり低いです。
このくらいの大きさであれば、海でよく磨かれていてヒスイらしい特徴が出ていますので、見分け易いヒスイです。
私が拾っているのもたいてい100g以下の大きさです。
100g以上のヒスイを見つけたいなら、海が荒れた後とか条件のいいときを選んで探さないと難しいでしょう。
大きいだけに目立って、他の人に拾われ易いのです。
1kg以上のヒスイを見つけたいなら、海岸を選ぶ必要があります。
私がよく立ち寄るY海岸やO海岸などH川の東側の海岸や、沖にテトラポッドや潜堤のある海岸(つまり海水浴場になっているようなヒスイ海岸)では難しいでしょう。
10kg以上となるとさらに難しくなります。
狙うなら、H川やO川などヒスイが流れてくる川の河口付近の海岸や、大きな石がごろごろしている海岸なら可能性がありそうですが、もともとそれだけの大きいヒスイはごく数が少ない上に、慣れないと見分けることも一層難しくなってしまいます。
波打ち際まで打ち上げられることも少ないでしょうから、海中にあるのを見つけて、引き上げる工夫も必要でしょう。
あまりお薦めはしませんが、川で探した方がまだ見つけ易いかも知れません。
このくらいの大きさのヒスイになると、海でも川でもそう変わらず、表面が荒れた状態で見つかることが多いようです。
100kg以上は機械がないと運ぶこともできないでしょう。
もし、そんな大きなのヒスイを見つけることがあったら、それは個人のものではなく地域の財産です。
FMMに連絡して、保護の手続きを取っていただくことにしましょう。

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